花が美しく、できれば増やしたいと思うのはバラ愛好家として自然なこと。でもその“増やしたい”という気持ちが、知らず知らずのうちに法律違反になっているかもしれません。
このページでは、初めてバラの挿し木に挑戦する方や、育てた苗をフリマに出してもいいのか迷っている方に向けて、挿し木に関わる「基本ルールとマナー」を分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- バラにも知的財産がある?
- 実際に起きた「違反事例」から学ぼう
- どんな品種なら挿し木してもOK?
- 「違法かも?」と思ったら
まず知っておきたい:バラにも知的財産がある?
挿し木をしてもいい品種と、そうでない品種には大きな違いがあります。ここでは、その違いを理解するために必要な基本知識を見ていきましょう。
登録品種とパテント苗とは
多くの現代バラは、専門の育種家が長い年月と技術、投資を経て開発したものです。
その品種は「登録」され、法律によって保護されます。登録された品種のことを「登録品種」、またそれらにかかる権利を「育成者権(パテント)」と呼びます。
つまり、「この品種は自分で作ったものだから、勝手に増やしたり売らないでね」という権利です。
無断で増やすのはNG!
登録品種を無断で挿し木で増やすことは、たとえ個人であってもNGです。販売目的であればなおさら違法になります。
ブランド名がついた苗は特に注意
「ロサオリエンティス」「デルバール」「河本バラ園」など、ブランドが明確な品種は、ほぼ間違いなく登録品種です。
購入者が楽しむ範囲での育成はOKですが、挿し木して他人にあげたり売ったりするのは、法律的に問題になる可能性があります。
実際に起きた「違反事例」から学ぼう
法律違反と言われても実感がわきにくいかもしれません。ここでは実際に摘発された具体例を見て、どのような行為が違反になるのかを確認しましょう。
1. イチゴ「桃薫」の無断増殖・販売
農研機構が開発したイチゴ「桃薫」を無許可で挿し木・販売していたとして、2024年に複数名が摘発されました。
2. 東京おひさまベリー事件
東京都が開発した品種を無断で販売した女性が、種苗法違反の疑いで検挙されました。
これらはイチゴの事例ですが、バラにも同じ法律が適用されます。販売目的でなくても、違法と判断されることがあります。
✅ 挿し木、やっていい?ダメ?チェックリスト
ケース | OK / NG | 理由・注意点 |
---|---|---|
自宅の庭で楽しむために増やす | ✅ OK | 非営利かつ私的利用の範囲であれば原則問題なし |
友人に苗をあげる | ⚠ グレー | 無償でも営利性が疑われると違反とみなされる可能性あり |
フリマサイトで販売 | ❌ NG | 育成者権または商標権の侵害になる場合がある |
権利が切れた古い品種を販売 | ✅ OK | 育成者権・商標権ともに切れていれば販売可 |
商標付きの名前で販売 | ❌ NG | たとえ権利が切れていても「名前の使用」はNG |
どんな品種なら挿し木してもOK?
「それじゃあ何なら大丈夫なの?」という疑問にお答えするため、挿し木しても法律上問題のないケースを紹介します。
1. 育成者権が切れた古い品種
バラの育成者権は25〜30年で自動的に切れます。そのため、古くからある品種やオールドローズは自由に増やしてOKな場合が多いです。
2. 登録されていない「オープン品種」
そもそも登録されていない品種もあります。これらも基本的には自由に扱って大丈夫です。
3. 「挿し木OK」と明記されている品種
最近では、個人での挿し木を許可してくれる育種家もいます。購入時のラベルや公式サイトで確認しましょう。
✅ 品種の分類と判断の目安
以下のように、品種は「育成者権」と「商標権」の状態によって分類されます。
- ① 育成者権・商標権どちらも有効:挿し木も販売も不可(例:最新のロサオリエンティス品種)
- ② 育成者権のみ有効:販売不可・名前の使用は可(例:切れかけのブランド品種)
- ③ 商標権のみ有効:挿し木販売は可能、名前の使用は不可(例:ナエマ、ピエール)
- ④ 両方切れている:販売もOK・名前の使用も可(例:オールドローズ、開放品種)
POINT:それぞれの権利状態を調べることで、安心して挿し木や販売を楽しめます。
❓ よくある誤解とQ&A
- Q. 買ったバラなら、自由に挿して売ってもいい?
- A. いいえ。買った苗でも「品種」に対する権利が残っていれば、挿し木や販売は違法になる可能性があります。
- Q. 名前を書かなければ売ってもいい?
- A. NGです。たとえ名前を伏せても、品種が特定できれば「無断増殖・販売」と判断される可能性があります。
- Q. 趣味の延長で少し売るだけならセーフ?
- A. 基本的にアウトです。営利目的であると判断されると、種苗法違反や商標法違反に問われる場合があります。
- Q. どうすれば調べられるの?
- A. 「品種登録データベース」や「J-PlatPat(商標検索)」を使って調べることができます。調べ方は こちらの記事 で解説しています。
「違法かも?」と思ったら
不安を感じたときにどう確認すればよいのか、具体的なチェック方法をご紹介します。
タグやラベルを確認しよう
品種名・ブランド名・育種家名が記載されたタグがある場合は、それが判断材料になります。迷ったら公式サイトで確認を。
データベースで調べるのも手
農林水産省の「品種登録データベース」や、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で調べることも可能です。
【詳しく知りたい方はこちら】

正しい知識で、楽しく挿し木ライフを!
「バラの挿し木」はとても楽しい園芸活動のひとつです。ですが、ほんの少しの知識がないことで、法律のラインを越えてしまうこともあります。
この記事を通して「何がOKで、何がNGか」を少しでも理解していただけたら嬉しいです。
知識を持って育てれば、バラライフはもっと楽しく、もっと誇らしいものになりますよ!